【呼吸不全】
障害年金・認定基準


1.認定基準  呼吸器疾患による障害の程度は、次のとおり認定する。
          以下に呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示する。
障害の程度 障害の状態
1級 下記(4)のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、
 かつ、一般状態区分表のオに該当するもの。
2級 下記(4)のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、
 かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの。
3級 下記(4)のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、
 かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの。




なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の
検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。





2.認定要領


(1)呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と
   動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態
   をいう。認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。
   慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管
   支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異
   常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患で
   はない。


(2)呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚
   症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。


(3)検査成績としては、動脈血ガス分析値予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う
   運動負荷肺機能検査等がある。


(4)動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次の
   とおりである。
   なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。


A表 動脈血ガス分析値
区分 検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
動脈血O
分圧
Torr 70〜61 60〜56 55以下
動脈血CO
分圧
Torr 46〜50 51〜59 60以上
(注)病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視する。


B表 予測肺活量1秒率
検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
予測肺活量
1秒率
40〜31 30〜21 20以下


(5)呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。
      一般状態区分表
区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、
軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、
日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出がほぼ不可能と
なったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、
活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの




(6)慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する
   薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定
   することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 障害の状態
1級 ・最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間が
 なく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率
 高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常
 に在宅酸素療法を必要とするもの。
2級 ・呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、
 一般状態区分表のエ又はウに該当する場合であって、プレドニゾロンに
 換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入
 ステロイド高用量の連用を必要とするもの
3級 ・喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を
 必要とする場合があり、一般状態区分表のウ又はイに該当する場合で
 あって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤
 以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用を少
 なくとも週に1回以上必要とするもの。
(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。
     また、全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは
     限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」に基づく治療
     を受けているとは限らないことに留意が必要。
(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。
     このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。
(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準
     で認定する。




(7)在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。


   ア 常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に
     常に支障がある程度のものは3級と認定する。
     なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、
     さらに上位等級に認定する。


   イ 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日
     (初診日から起算して1年6月以内の日に限る。)とする。


(8)原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表
   及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。


(9)慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定する。
    なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、
    さらに上位等級に認定する。


(10)慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓
    器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示す
    ものとは言えない。


(11)肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全
    発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。






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