変形性股関節症は、股関節でクッションの役割を果たしている「関節軟骨」が何らかの理由ですり減ったことにより起こります。症状が進むと、立ったり、歩いたりするさいにズキズキと痛みが起こり、安静にしていても鈍痛が続きます。障害年金の制度では、この変形性股関節症について、人工関節を装着した場合3級に認定することとし、人工関節を装着したにも関わらず状態が悪い場合は2級または1級に認定することとしています。
変形性股関節症には2つのタイプがあります。一つは大人になってから発病する原因不明のもの、もう一つは先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などから生じるものです。
現在、障害年金を申請する方のほとんどは後者に属し、大半を女性が占めています。
小さい頃、股関節脱臼で治療を受けたり、大人になってから医師に臼蓋形成不全と診断された方は、障害年金の申請においては注意が必要です。
といいますのは、審査で「先天性」と判断された場合、たとえ大人になってから症状が出たものでも、初診日を0歳に持っていかれ、20歳前傷病として扱われてしまうからです。この場合、厚生年金では申請できず、人工関節(3級)だけでは障害年金が受給できなくなります。
先天性となるかどうかは、主に「病歴状況申立書」「先天性股関節アンケート」「レントゲンフィルム」の3つから判断されます。
レントゲンフィルム上、あきらかな先天性股関節症と判断され
|
|
るものなら仕方ありませんが、申請書の書き方によって先天性と判断されてしまっている方もいらっしゃるので、ここでは書類作成の注意点を解説していきます。
まず幼少時に股関節脱臼を経験していたり、大人になってから臼蓋形成不全を指摘された場合、すべての方が「先天性」と判断されるかというと、そうではありません。多くの方が「先天性」とはならず、厚生年金で受給が認められています。つまり小さい頃に股関節脱臼をして一定期間ギブスを付けていたとしても、その後、自覚症状がなく、体育の授業なども普通にでき、30代、40代になって症状が出てきた場合は、先天性とは判断されないことがほとんどだというわけです。
しかし、申請者の中には自分の病状をアピールしたいために、「小さい頃から痛みが続いていた」といったことを病歴状況申立書や先天性股関節アンケートに書いてしまう方がいます。それが事実ならば正しい申告といえますが、障害の状態を強調したいがために大げさに書いているならば、それは先天性だということをアピールしているのと同じです。
前述したように、厚生年金加入時の初診日で受給が認められる方の病歴は、小さい頃に股関節脱臼はあったものの、その後は痛みが消え、10代、20代は普通に暮らせ、歳をとって再び痛みだしたというケースです。この点を注意しながら書類作成を進めていくようにしましょう。
なお、両脚に人工股関節を入れたにも関わらず、術後の経過が非常に悪く、肢体の運動機能が著しく制限される場合は2級も狙えます。
この場合、初診日が国民年金でも受給が認められる可能性がありますので、障害年金の申請にチャレンジしてみるかどうかを検討してみてはどうかと思います。
◆変形性股関節症と障害年金の関係 |
人工股関節+経過良好→障害年金3級になる!
人工股関節+経過不良→障害年金2級の可能性が! |
|
|